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ミノキシジルによる多毛症とは?なぜ体毛が濃くなるのか
薄毛治療の切り札として知られる「ミノキシジル」。その発毛効果に期待を寄せる一方で、使用を検討する多くの人が不安に感じる副作用の一つに「多毛症」があります。多毛症とは、頭髪だけでなく、顔の産毛や腕、足、指、背中といった、本来は毛が薄かったはずの部位の体毛が、濃く、太く、長くなる現象のことを指します。これは、ミノキシジルが持つ作用の仕組みを理解すると、なぜ起こるのかが見えてきます。ミノキシジルは、もともと高血圧の治療薬(血管拡張薬)として開発されました。その主な作用は、血管を広げて血流をスムーズにすること、そして毛根周辺で「成長因子」と呼ばれる細胞の増殖を促す物質の産生を助けることです。この二つの働きが、髪の毛を作り出す毛母細胞を活性化させ、発毛を促すと考えられています。問題は、この作用が頭皮だけに限定されないという点です。頭皮に塗るタイプの外用薬であっても、有効成分の一部は皮膚から吸収されて血流に乗り、全身を巡ります。ましてや、経口で摂取する内服薬(ミノキシジルタブレット、通称ミノタブ)の場合は、有効成分が直接血流に乗って全身に行き渡ります。その結果、ミノキシジルの持つ「毛を成長させる」という指令が、頭髪だけでなく、全身の毛根(毛包)にも届いてしまうのです。休止期にあった体毛の毛根が刺激されて成長期に移行したり、もともとあった産毛の成長期が延長されたりすることで、結果として体毛が濃くなる「多毛症」が引き起こされます。ある意味では、多毛症は、ミノキシジルの成分がきちんと体内に吸収され、全身に作用している明確な証拠とも言えます。しかし、それは紛れもなく副作用の一つであり、特に女性にとっては美容上の大きな悩みとなり得ます。ミノキシジルは、頭髪を育てる強力な味方であると同時に、望まない部位の毛も育ててしまう可能性があるということを、使用前に正しく理解しておくことが大切です。