専門医に聞くランニングは薄毛改善に繋がるのか
近年、健康志向の高まりとともにランニングを始める人が増えています。そして、ランニングがもたらす様々な健康効果の中に、薄毛改善への期待を寄せる声も聞かれるようになりました。果たして、ランニングは本当に薄毛の悩みを解決する一助となるのでしょうか。皮膚科専門医であり、毛髪治療にも詳しい佐藤先生(仮名)にお話を伺いました。「先生、ランニングが薄毛に良いという話を耳にすることがありますが、医学的な観点から見ていかがでしょうか?」「ランニングが直接的に発毛を促すという明確なエビデンスは、現時点では確立されていません。しかし、間接的に頭皮環境や髪の成長に良い影響を与える可能性は十分に考えられます。まず、ランニングのような有酸素運動は全身の血行を促進します。頭皮も体の一部ですから、血流が改善されれば、毛髪の成長に必要な栄養素や酸素が毛母細胞に行き渡りやすくなり、毛母細胞の働きが活発になり、健康な髪が育つ土壌が整えられると期待できます。」「血行促進以外にも、何か考えられる効果はありますか?」「ストレスの軽減も大きなポイントです。現代社会においてストレスは避けられませんが、過度なストレスは自律神経のバランスを崩し、血管を収縮させて頭皮の血行を悪化させたり、ホルモンバランスに悪影響を与えたりすることが知られています。これらは抜け毛や薄毛の原因となり得ます。ランニングには、セロトニンなどの神経伝達物質の分泌を促し、精神的なリフレッシュ効果やストレス軽減効果があることがわかっています。ストレスが緩和されれば、髪へのマイナス要因も減らせる可能性があります。また、適度な運動は睡眠の質の向上にも繋がります。髪の成長に重要な役割を果たす成長ホルモンは、主に睡眠中に分泌されます。質の高い睡眠を確保することは、健やかな髪を育む上で非常に大切です。」「ランニングを始めるにあたって、注意すべき点はありますか?」「何事もやり過ぎは禁物です。過度な運動はかえって体にストレスを与えたり、活性酸素を過剰に発生させたりする可能性があります。ご自身の体力レベルに合わせて、無理のない範囲で継続することが重要です。また、ランニングはあくまで健康維持の一環であり、薄毛治療の代替となるものではありません。もし薄毛が深刻な悩みである場合は、自己判断せずに専門医に相談し、適切な診断と治療を受けることをお勧めします」。