今回は、数多くの薄毛治療を手掛ける専門医に、育毛メソセラピーの医学的な位置づけと、その可能性についてお話を伺いました。「現在のAGA診療ガイドラインにおいて、最も強く推奨されているのはフィナステリドなどの内服薬とミノキシジルの外用薬です。メソセラピーは、現時点では科学的根拠がまだ十分とは言えず、補助的な治療法として位置づけられています」と、医師はまず慎重な見解を示します。しかし、その上で、臨床現場におけるメソセラピーの有用性は非常に高いと語ります。「特に、内服薬や外用薬の効果をさらに高めたい、より早く効果を実感したい、という方にとって、メソセラピーは強力な選択肢となります。内服薬で薄毛の進行を食い止めながら、メソセラピーで毛根に直接栄養と刺激を与える『併用療法』は、単独の治療よりも高い効果を示すケースが少なくありません。また、副作用の懸念から内服薬が使えない方や、女性の薄毛のように、内服薬の選択肢が限られる場合にも、メソセラピーは非常に有効なアプローチとなり得ます」ただし、医師は注意点も強調します。「メソセラピーと一口に言っても、注入する薬剤の成分や濃度、注入方法などはクリニックによって千差万別です。どの成分が自分の症状に合っているのか、医師と十分に相談し、納得した上で治療を受けることが極めて重要です。また、医療行為である以上、リスクもゼロではありません。注入時の痛みや、内出血、腫れ、アレルギー反応などが起こる可能性はあります。もちろん、これらは一時的なものがほとんどですが、そうしたリスクについても、事前にしっかりと説明を受け、理解しておく必要があります」メソセラピーは、魔法の治療法ではありません。しかし、その特性と限界を正しく理解し、信頼できる医師のもとで行えば、薄毛治療の可能性を大きく広げてくれる、価値ある治療法であることは間違いないでしょう。