私がAGAクリニックに通い始め、処方された薬を飲み始めたのは30代半ばのことでした。頭頂部の透け感が気になり出し、なんとか食い止めたい一心での決断でした。医師からは事前に「飲み始めに一時的に抜け毛が増えることがありますよ」と説明を受けていましたが、正直なところ、そこまで深刻には考えていませんでした。しかし、治療開始から2週間ほど経った頃、その予言は現実のものとなりました。朝、枕元に落ちている髪の数が明らかに増え、シャンプーをするたびに手のひらに絡みつく髪の量に戦慄しました。最もショックだったのは、風呂上がりに排水溝に溜まった髪の毛の山を見たときです。黒々としたその塊を見るたびに、私の心は折れそうになりました。「薬のせいでハゲが加速しているんじゃないか」「このまま全部なくなってしまうんじゃないか」という疑念が頭をよぎり、薬を飲む手が震える日もありました。 鏡を見るのも嫌になり、外出時は常に帽子を目深に被って過ごしました。しかし、ここで止めたら今まで払った治療費も、これから生えるかもしれない希望もすべて失ってしまうと思い直し、歯を食いしばって服用を続けました。この地獄のような期間は約一ヶ月半ほど続きました。そして、ある日を境に抜け毛の量がピタッと減ったのです。それだけでなく、鏡で頭皮をよく観察すると、抜けた場所からごく細い産毛が無数に生え始めているのに気づきました。その産毛は日に日に太く、黒くなっていき、半年が過ぎる頃には、治療前よりも明らかにボリュームが増しているのを実感できました。あの時、排水溝の黒い山に絶望して治療を止めていたら、今のフサフサとした髪は手に入らなかったでしょう。初期脱毛は本当に辛い試練でしたが、それを乗り越えた先にしか見えない景色があることを、身をもって体験しました。今、同じ恐怖と戦っている人には、その抜け毛は夜明け前の暗闇なのだと伝えたいです。
排水溝の黒い山に絶望した私の逆転劇